過去の見積書と問い合わせメールを見比べながら、自社サイトに載せる料金の目安を書き出している企業のWEB担当者

料金・費用ページの作り方|問い合わせの「質」を上げる整え方

問い合わせフォームから1件、通知が届きます。

「お、来た」と思ってメールを開き、翌日さっそく電話をかける。話は弾んで、要望も具体的で、いい感じです。そして最後に予算の話になったところで、相手が言います。

「え、そんなにするんですか」

受話器を置いたあと、少し疲れが残りますよね。相手が悪いわけでもなく、こちらが高いわけでもない。ただ、最初からずれていただけです。

こういうことが月に何度か続くと、社内では「問い合わせの質が悪い」という言い方になりがちです。でも、質が悪いのではありません。サイトの中に、金額の手がかりがひとつも無かった。それだけのことが多いのです。

結論:料金ページで大事なのは、全部の金額を公開することではありません。次の3つのうち、書けるものから載せることです。
①目安(いくらくらいからか)
②決まり方(何によって金額が変わるのか)
③料金例(実際にありそうな組み合わせを2〜3パターン)

「案件ごとに違うので金額は出せません」という会社でも、②の決まり方だけなら今日書けます。そして実は、読み手がいちばん知りたいのも②です。

何が起きているのか

訪問者は「高いか安いか」ではなく「桁」を知りたい

料金を載せない理由としてよく挙がるのが、「安さで比べられたくない」という気持ちです。とてもよく分かります。

ただ、サイトを見ている人が探しているのは、多くの場合そこではありません。探しているのは桁です。

この3つが分からないと、人は次の行動を決められません。問い合わせるかどうか以前に、社内で話を始められないからです。

何も書いていないと、想像で判断される

料金の情報が無いページを見たとき、訪問者は判断をやめるわけではありません。勝手に想像して判断します。

前者は静かに去るので、こちらからは見えません。後者だけが問い合わせとして残ります。「話が合わない問い合わせばかり来る」と感じるとき、実際に起きているのはこの選別です。誰かがサボった結果ではなく、情報が無いところに想像が入り込んだ結果です。

「案件ごとに違う」は、書けない理由にならない

社内で料金掲載の話をすると、だいたい同じ言葉が返ってきます。

どれも、現場としてはもっともな心配です。ここを無視して「載せましょう」と押し切っても、社内は動きません。

でも、この3つはいずれも「金額そのものを1円単位で出す」ことへの心配です。金額を出さずに、次のような書き方はできます。

心配ごと出せる情報
案件ごとに違う何によって変わるか(規模・数量・納期・オプション)
競合に見られたくない下限だけ(「◯万円から承っています」)
安さで比べられたくない含まれているもの(サポート範囲・期間・体制)

金額を伏せても、判断の材料は渡せます。むしろ「何で変わるか」を先に説明できる会社は、価格表だけを貼っている会社より丁寧に見えます。

「問い合わせが減るのでは」という不安について

正直にお伝えすると、料金の目安を載せると問い合わせの件数は減ることがあります。予算が合わない人が、問い合わせる前に自分で判断してくれるからです。

そのぶん、残った問い合わせは話が早くなります。件数だけを目標にしている場合は、この変化を社内でどう説明するかを先に決めておくと安心です(WEB担当のKPI・目標の決め方に、件数以外の見方をまとめています)。

減ったのではなく、前に進む見込みのない対応が減った。この言い換えを、上司との会話の前に用意しておきましょう。

手順を小さく分ける

一気に立派な料金ページを作ろうとすると、社内調整で止まります。30分ずつ、4回に分けます。

①【30分】過去の問い合わせから「聞かれた金額」を集める

最初にやるのは、ページを書くことではありません。すでに聞かれていることを集めることです。

ここで出てくる言葉が、そのまま料金ページの見出しになります。自分で考えた説明より、お客さんが実際に使った言葉のほうが強いです。

サイト内検索を設置しているなら、サイト内検索のキーワード分析で「料金」「費用」「価格」と検索された回数も見ておくと、社内を説得する材料になります。

②【30分】3つの型から、書けるものを選ぶ

集めた材料をもとに、載せ方を決めます。型は3つです。全部やらなくて構いません。ひとつ選べば、ページは作れます。

料金ページの3つの見せ方(金額の幅を示す帯、金額が変わる要素の一覧、複数のプラン例)を横に並べて比べた図
全部の金額を出さなくて大丈夫。この3つのうち、社内で通るものをひとつ選べば十分です

型1:目安(いちばん手軽)

「◯万円から」「◯万円〜◯万円が中心です」と、幅で伝える書き方です。

書くときに気をつけたいのは、下限を実態から離さないこと。ほとんど実績のない最小構成の金額を「◯万円から」と出すと、問い合わせは増えても商談で結局ずれます。「実際に、この金額で受けたことがあるか」を基準に決めましょう。

型2:決まり方(金額を出せない会社向け)

金額を1円も書かずに作れるのが、この型です。何によって金額が変わるのかを、箇条書きで並べるだけ。

お見積もりが変わる主な要素
- ご依頼の範囲(企画から担当するか、制作のみか)
- 数量・ページ数
- ご希望の納期(短納期の場合は体制を増やすことがあります)
- 公開後の運用サポートを含めるかどうか

これだけでも、読んだ人は「うちは範囲が広いから、上のほうかな」と自分で見当をつけられます。社内でいちばん通しやすい型でもあります。

型3:料金例(信頼されやすい)

「小規模な場合」「標準的な場合」「大規模な場合」のように、ありそうな組み合わせを2〜3パターン、含まれる内容つきで並べます。

大切なのは金額の大小ではなく、何が含まれていて、何が含まれていないかをはっきりさせることです。「一式」でまとめず、項目を分けて書く。ここは、自分が発注する側になったときの気持ちを思い出すと分かりやすいところです(見積書のどこを見るかで、発注側の視点をまとめています)。

③【30分】書けないところは「書けない理由」を書く

3つの型を選んでも、どうしても金額を書けない部分は残ります。そのときは、空欄にせず、理由を一行添えます。

これがあると、読んだ人は「聞けば教えてもらえる」と分かります。沈黙は不安になりますが、説明のある沈黙は不安になりません。

あわせて、料金まわりで繰り返し聞かれることはFAQページにも足しておきましょう。「支払いのタイミングは」「途中で追加が出たらどうなるか」「最低金額はあるか」——このあたりは、問い合わせる前に確認したい人が多い項目です。

④【15分】問い合わせ導線と結びつける

最後は、読み終わった人が次に進める形にします。

料金ページを読んだ人は、「自分の場合はいくらか」を知りたい状態です。ここで「お問い合わせはこちら」だけだと、少し距離があります。ボタンの言葉を、その気持ちに寄せます。

ボタンの文言と置き場所の考え方はCTAボタンの文言・位置の見直しに、フォーム側で聞く項目の整理は問い合わせフォームの離脱を減らすにまとめています。予算欄を選択式で1つ足しておくと、この記事の最初の電話のようなすれ違いはかなり減ります。

価格を載せるときの、ちいさな注意点

金額をサイトに出すときは、表示のルールを2つだけ確認しておくと安心です。むずかしい話ではありません。

税込・税別をはっきり書く。一般の消費者に向けて価格を表示する場合、消費税を含めた総額での表示が原則とされています(総額表示)。事業者どうしの取引だけを想定したページはこの義務の対象外ですが、その場合でも「(税別)」と一言添えておくほうが、後の行き違いが減ります。

根拠のない比較や、最上級の言い方をしない。「通常価格◯円のところ◯円」のような書き方は、実際にその価格で販売していた実績がないと、景品表示法上の有利誤認とみなされるおそれがあります。「業界最安値」「どこよりも安い」といった表現も、示せる根拠がなければ避けておきましょう。

どちらも、普通に正直に書いていれば引っかからない種類のものです。過度に怖がる必要はありませんが、キャンペーン価格を載せるときだけは一度立ち止まってください。

具体例:ある会社の3か月

社員25人の業務用機器の販売・保守会社。WEB担当は総務兼務のひとりです。

それまで。問い合わせは月に8件ほど。しかし商談まで進むのは1〜2件で、残りは「思っていたより高い」で終わっていました。営業からは「サイトからの問い合わせは薄い」と言われ、担当者は肩身の狭い思いをしていました。

1か月目。過去半年の問い合わせメールを読み返したところ、8割に「費用はどのくらいですか」という一文が入っていました。つまり、サイトを見ても分からないまま送信されていたわけです。

社内で相談すると、案の定「金額は出せない」。そこで型2の「決まり方」だけで作ることにしました。金額はゼロ。変わる要素を5項目、箇条書きにしただけのページです。所要時間は、社内確認を含めて2週間。

2か月目。問い合わせは月8件から5件に減りました。担当者は少し不安になりましたが、営業に聞くと「最近来るやつ、話が早い」との反応。5件のうち3件が商談に進みました。

3か月目。営業から「保守料金の目安も書けないか」と逆に相談が来ます。ここで初めて、型1の「目安」を1行だけ追加しました。「月額◯万円からご利用いただけます」。

問い合わせは月6件に戻り、商談化は4件。件数は減ったのに、商談は倍になりました。

派手なことは何もしていません。すでに何度も聞かれていた質問に、先に答えただけです。それでも、電話を切ったあとの気持ちは、ずいぶん軽くなったそうです。

あなたへの影響

料金の情報を出すと、変わることが3つあります。

1つ目は、電話が楽になることです。金額の説明から始めなくてよくなると、最初の5分の緊張が減ります。相手も予算感を持って電話に出てくれるので、会話が「値段の話」から「中身の話」に変わります。

2つ目は、社内での立ち位置です。「サイトからの問い合わせは薄い」と言われていた状態から、「サイト経由は話が早い」に変わると、次の施策の相談がしやすくなります。数字の見せ方はWEB施策の費用対効果を社内に説明するを参考にしてください。

3つ目は、検索からの流入です。「◯◯ 料金」「◯◯ 費用 相場」は、多くの業種で検索される言葉です。答えるページが無ければ、その検索は他社に流れています。狙う言葉の探し方はキーワードの探し方、検索結果での見え方の整え方はtitleとmeta descriptionの書き方にまとめてあります。

明日やること

30分で、ここまでできます。

  1. 過去半年の問い合わせメールを開き、「費用」「料金」「価格」で検索する(5分)
  2. 金額に関する質問が何件あったかを数える(5分)
  3. 見積書を3枚並べ、いちばん小さい金額を確認する(5分)
  4. 3つの型(目安・決まり方・料金例)から、社内で通りそうなものを1つ選ぶ(5分)
  5. 「お見積もりが変わる主な要素」を5行、箇条書きで書いてみる(10分)

5まで書ければ、それがもう料金ページの下書きです。きれいに整えるのは、社内で見せたあとで構いません。

そして、上司に相談するときの一言はこれで十分です。

「問い合わせの◯件中◯件で、費用を聞かれていました。金額は出さずに『何で変わるか』だけ載せてみませんか」

今日のチェックリスト

最低ライン(ここだけでも、すれ違いはかなり減ります)

余裕があれば

全部にチェックが入らなくて大丈夫です。上の5つが済んでいれば、電話口の「え、そんなにするんですか」はかなり減っています。

締めに

料金を載せるかどうかは、WEB担当が一人で決められることではありません。社内の意見も、業界の慣習も、これまでの経緯もあります。「載せたほうがいいのは分かっているけど、うちでは無理」——そう思いながら読んだ方も多いと思います。

それでも、この記事でいちばん伝えたかったのは、金額を出さなくても渡せる情報があるということです。

何によって変わるのか。何が含まれるのか。どういう場合に高くなるのか。それは、すでにあなたが電話で毎回説明していることです。新しく考える必要はありません。話していることを、そのまま文字にするだけでいいのです。

問い合わせの電話で相手と落ち着いて話が進み、穏やかな表情で内容をメモしている企業のWEB担当者
最初のすれ違いが減るだけで、電話は驚くほど楽になります

そして、もし今日は社内が動かなくても、数えた数字はあなたの手元に残ります。「問い合わせの8割で費用を聞かれていた」——この一行は、半年後にもう一度出せる材料です。今日は、そこまでで十分です。

※本記事は一般的な実務の考え方をまとめたものです。価格表示に関するルール(総額表示、景品表示法上の不当表示など)の詳細や適用範囲は業種・取引形態によって異なり、制度の運用も更新されることがあります。実際の表示内容の判断は、消費者庁・国税庁などの最新の公式情報や、必要に応じて専門家にご確認ください。

よければ、こちらも

いまのアクセスから問い合わせ件数の見込みを立てたいときは問い合わせ数 試算・逆算 計算機、広告や施策の採算を見たいときはCV・CPA計算機もどうぞ。「うちの業種でも料金を出していいものか」と迷ったら、お問い合わせから気軽に声をかけてくださいね。一緒に考えていきましょう。

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