
WEB担当のKPI・目標の決め方|上司と話す前に整える考え方
「WEBの目標、何にする? 来期のぶん、決めておいて」 ——会議のあとに上司からそう言われて、席に戻ってから手が止まった。そんな経験はありませんか。
数字なら、いくらでも出せます。PV、セッション、直帰、検索順位、問い合わせ件数。GA4を開けば指標は山ほど並んでいます。でも「どれを目標にするか」となると、急に決めきれなくなる。高すぎる数字を約束すれば苦しくなるし、低すぎれば「それでいいの?」と言われそうで、どこに置いても落ち着かない。
決められないのは、あなたの勉強不足ではありません。WEBの数字は「自分で動かせるもの」と「動かしにくいもの」が混ざっていて、そこを分けないまま目標にしようとすると、誰でも迷います。今日は、その分け方から一緒に整理していきましょう。
結論:目標は3段に分けて、合計3つまでに絞ります。①成果の数字(会社が最後に見たいもの。問い合わせ件数など)、②中間の数字(その手前にある、自分の工夫が届くもの。検索からの主要ページ閲覧やフォーム到達など)、③行動の数字(自分がやった量。改善したページ数など)。そして、数値を決める前に過去数か月の実績(基準値)を先に並べること。上司と話すときは「いくつにするか」より先に「何を数えるか」をそろえると、話が驚くほどスムーズになります。
何が起きているのか
「KPIを決めておいて」と言われて困るのは、言葉の中身が人によってずれているからでもあります。まず、ここだけ整理させてください。
- KGI:最終的にたどり着きたいゴールの数字。会社が本当に見たいもの(例:問い合わせ件数、資料請求数)。
- KPI:そのゴールに向かって順調かどうかを、途中で確かめるための数字。日本語にすると「中間の目印」に近い言葉です。
つまりKPIは、ゴールそのものではなく道中の標識です。ここが混ざると、「問い合わせ件数」だけを一人で背負うことになり、しんどくなります。
そしてもうひとつ、WEBの数字には自分で動かせる度合いの差があります。
| 段 | 数字の例 | 自分で動かせる度合い |
|---|---|---|
| 成果の数字 | 問い合わせ件数・資料請求数 | 低め(商品力・季節・営業の動きにも左右される) |
| 中間の数字 | サービスページの閲覧数、フォームまで進んだ人の割合 | 中くらい(ページの直し方で変わる) |
| 行動の数字 | 更新した本数、改善したページ数 | 高い(自分の手で決められる) |
一人WEB担当がつらくなりやすいのは、成果の数字だけを目標にしたときです。景気や競合、営業の動きでも上下する数字なので、うまくいかない月に「自分のせいだ」と抱え込むことになります。
かといって、行動の数字だけでは「で、それで会社は何が良くなったの?」と聞かれたときに答えづらい。だから、3段そろえておくのがいちばん落ち着きます。上がった月も、上がらなかった月も、説明できる材料が手元に残るからです。
なお、PV(ページの表示回数)を目標に置くのは、悪いことではありません。ただ、PVが増えても問い合わせが増えないことは普通に起こります。PVは中間の数字のひとつ、という位置づけにしておくと、後で説明がしやすくなります。
手順を小さく分ける

一度に完璧な目標をつくろうとしなくて大丈夫です。次の順番で、ひとつずつ進めてみましょう。
- 上司に「何を期待しているか」を先に聞く:目標値の話をする前に、ここです。「WEBサイトに、いちばん期待していることを教えてください」と一言たずねてみましょう。返ってくる答えは、問い合わせだったり、採用の応募だったり、名刺代わりの信頼感だったりします。期待の中身がわかれば、成果の数字は自然に決まります。
- いまの数字を並べる(基準値づくり):目標を決める前に、過去3〜6か月の実績を出します。問い合わせ件数は社内の受付台帳やメールから、閲覧数はGA4から、検索からの流入はSearch Consoleから。ここを飛ばして目標だけ決めると、根拠のない数字になってしまいます。(見方に迷ったら Search Consoleで検索流入を確認する基本 や 月次レポートを15分で作る を参考にどうぞ)
- 中間の数字を1〜2つ選ぶ:成果の手前にあって、自分の工夫が届くところを選びます。問い合わせを増やしたいなら、「サービスページを見た人の数」「フォームの入力画面まで進んだ人の数」あたりが素直です。多くても2つまで。増やすほど、追いかける手間だけが増えていきます。
- 行動の数字を1つ置く:「サービスページを月2本見直す」「お知らせを月4本出す」など、自分の手で終わらせられるものを1つ。数字が動かなかった月でも、やったことが残ります。これは自分を守るための一段でもあります。
- 1枚の紙にまとめて、見直す時期も一緒に決める:3つの数字と、いまの実績、目標の幅、そして「3か月後に一度見直す」ことを書いて上司に見せます。最初から正解を当てにいかず、「まず3か月やってみて調整させてください」と添えるほうが、結果的に通りやすく、後で軌道修正もしやすくなります。
今日のところは、1と2——「上司に期待を聞く」「いまの数字を並べる」だけで十分な一歩です。
具体例
たとえば、社員50人ほどのメーカーで、一人でWEBを見ている担当者の場合。上司からは「サイトから問い合わせを増やしてほしい」と言われています。
まず基準値を出します。 過去6か月の問い合わせ件数を数えたら、月に4件、6件、5件、3件、7件、5件。合計30件なので、平均すると月5件でした。
ここでいきなり「月10件」と置くと、倍増を約束することになります。根拠のない倍増は、達成できなかったときに説明が苦しくなるので、平均5件に対して「月6〜7件」という幅のある目標にしました。年度でならすと、いまの水準(年60件ペース)から年72〜84件を目指す形です。
そのうえで、3段はこう置きました。
- 成果の数字:問い合わせ件数 月6〜7件(基準:月平均5件)
- 中間の数字:サービスページを見た人の数/フォームの入力画面まで進んだ人の数
- 行動の数字:サービスページを月2本、見直して更新する
さらに、上司との紙にはこの2行を添えました。
- 問い合わせ件数は季節で動くため、前月比だけでなく前年同月とも比べる
- 3か月後(10月末)に、目標そのものを一度見直す
この2行があるだけで、数字が伸びなかった月の会話がずいぶん変わります。「今月は3件でした、すみません」ではなく、「今月は3件、前年同月は2件なので水準としては保っています。中間の数字は伸びているので、フォームの手前を次に直します」と話せるようになる。言い訳ではなく、次の一手の相談になるわけです。
ちなみに、問い合わせ件数をGA4でも数えたい場合は、フォームの完了を計測する設定が必要になります(GA4では以前「コンバージョン」と呼ばれていた指標が、現在は「キーイベント」という名前になっています)。手順は 問い合わせCVをGA4で計測する設定 にまとめました。ただし、目標を決める最初の段階では、社内の受付台帳で数えた件数でまったく問題ありません。設定が終わるまで待たなくて大丈夫です。
あなたへの影響
- 上司との会話が「がんばっています」から、共通の数字の話に変わる。
- 数字が伸びなかった月も、中間・行動の数字が説明の材料になり、必要以上に責められずに済む。
- 「これもやって」と依頼が増えたとき、目標に効くかどうかで優先順位を相談できる(一人WEB担当の優先順位づけとあわせてどうぞ)。
- WEB施策は効果が出るまで時間がかかることを、見直し時期つきの目標として先に共有しておける。
- 自分がやった仕事が、社内から見えるようになる。
明日やること
- 上司に「WEBサイトにいちばん期待していることは何ですか」と、ひとことたずねる。
- 過去3〜6か月の問い合わせ件数を、社内の受付台帳やメールから数えて平均を出す。
- GA4かSearch Consoleを開いて、主要ページの閲覧数か検索からの流入の、いまの水準をメモする。
- 成果・中間・行動を1つずつ書いたメモを1枚つくる(数値はまだ空欄でも構いません)。
チェックリスト
まずはこの3つができれば、初回は十分です。最低ラインはここだけに絞ります。
- 会社がWEBに期待していること(成果の数字)を、上司と言葉でそろえた
- 過去3〜6か月の実績を並べて、いまの基準値がわかっている
- 成果・中間・行動を1つずつ、合計3つに絞って書き出した
残りは「余裕があるときに」の任意項目です。当てはまらなければ、空欄のままで問題ありません。
- 目標値を、ひとつの数字ではなく幅(○〜○件)で置いた
- 季節変動を踏まえて、前年同月とも比べる約束を書いた
- 見直す時期(3か月後など)を、目標と一緒に決めた
- 追いかける数字を、どの画面のどこで見るかまでメモした

目標を決める仕事は、正解を当てる仕事ではありません。いまの水準を知って、少しだけ先に旗を立てて、3か月後にまた置き直す。その繰り返しで十分です。
そして、伸びない月があっても、それはあなたの価値が下がったということではありません。数字を数えて、次にどこを直すか考えている——その時点で、サイトはもう前に進んでいます。今日はまず、過去の問い合わせ件数を数えるところから、はじめてみましょう。
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