
外注の成果物の検収基準|「これでOK」を4つの観点で決める
「新しい採用ページ、本番前の確認環境にアップしました。ご確認のうえ、問題なければ検収をお願いします」。 制作会社からのメールを開いて、ページを上から下まで眺めてみる。……たぶん大丈夫、な気がする。でも「問題なければ」の「問題」って、どこまで見ればいいんだろう。OKと返したあとに何か見つかったら、と思うと、返信ボタンの前で手が止まってしまう。
その迷いは、あなたの確認が甘いからではありません。多くの現場では、「何を確かめたらOKか」が、受け取る前に決まっていないだけです。基準がないまま眺めると、どれだけ時間をかけても「たぶん大丈夫」から先に進めません。今日は、外注の成果物を受け取るときの検収基準を、一人でも回せる形に一緒に整えていきましょう。
結論:外注の成果物は、次の4つの観点で確かめれば「これでOK」と言える状態になります。
1. 表示:パソコンとスマホで、見た目が崩れていないか
2. 動き:リンク・ボタン・フォームが、押したとおりに動くか
3. 中身:文字・数字・画像が、渡した原稿や依頼のとおりか
4. データ:受け取るべきファイルやアカウントが、そろっているか
大事なのは、この4つを納品の前に制作会社と共有しておくこと。基準が先にあれば、検収は「眺める作業」から「確かめる作業」に変わります。全部を完璧に見なくて大丈夫です。まずは次の納品で、1つ目の「表示」だけでも観点を決めて見てみましょう。
何が起きているのか:検収が「眺めて終わり」になる理由
検収(けんしゅう)とは、納品された成果物が依頼した内容どおりかを確かめて、「受け取りました」と認めることです。サイトの場合は、ページやバナー、記事原稿などがその対象になります。
この検収が、現場ではつい「ざっと眺めてOK」になりがちです。よくある理由は次のとおりです。
- 基準が依頼の段階で決まっていない:依頼書に「何ができていれば完成か」が書かれていないと、受け取る側も何を見ればいいのか分かりません。制作会社も「このくらいで完成だろう」と自分たちの基準で納品します。
- 見る人が自分ひとりしかいない:一人で兼務していると、確認の時間をまとめて取れません。気になる所だけ見て、残りは「たぶん大丈夫」で返してしまいます。
- 「不具合」と「追加の要望」が混ざる:確認しているうちに「やっぱりこの色を変えたい」という気持ちも出てきます。これが不具合の指摘と同じ一覧に並ぶと、制作会社とのやり取りがこじれやすくなります。
どれも、誰かが手を抜いているわけではありません。基準という物差しがないまま、測ろうとしているだけです。物差しは、一度作れば次の納品からも使い回せます。
検収基準を4つの観点で決める

ここからは、4つの観点をひとつずつ見ていきます。どれも「完璧に全部」ではなく、依頼した内容に合わせて、確かめる項目を数個ずつ決めるイメージです。
1. 表示:パソコンとスマホで見た目が崩れていないか
まずは見た目です。パソコンだけで確認して、スマホで見たら文字がはみ出していた、というのはよくあることです。
- パソコンとスマホ、少なくとも2つの画面で開いてみる
- 文字や画像がはみ出していないか、重なっていないか
- デザインカンプ(完成見本の画像)と、大きく違う所がないか
スマホは、自分の手持ちの機種で見るだけでも十分な第一歩です。崩れの見つけ方はスマホで表示が崩れている?自分で見つけて直す確認手順にまとめています。
2. 動き:押したとおりに動くか
次に、実際に押してみます。見た目が整っていても、リンク先が違っていた、フォームが届かなかった、ということは起こります。
- ページ内のリンク・ボタンを全部ひととおり押す(リンク先が正しいか、切れていないか)
- 問い合わせフォームがあれば、実際にテスト送信して、メールが届くかまで確かめる
- 電話番号のリンクが、スマホでタップしたときに正しい番号になっているか
フォームのテストは、送信ボタンを押して終わりにせず、受信側のメールまで見るのがコツです。手順は問い合わせフォームが届かない|送信テストと定期点検の手順が参考になります。
3. 中身:渡した原稿や依頼のとおりか
文字・数字・画像が、こちらの渡した内容と合っているかを見ます。ここは制作会社より、自社の人間のほうが確実に気づける部分です。
- 会社名・住所・電話番号・価格などの数字と固有名詞が、原稿どおりか
- 原稿にあった文章が、抜けたり古い版になったりしていないか
- 写真やロゴが、使ってよい最新のものになっているか
数字と固有名詞は、間違っていると影響が大きいわりに、ざっと読むと見逃しやすい所です。原稿を横に置いて、1つずつ指でなぞるように突き合わせると安心です。
4. データ:受け取るべきものがそろっているか
最後に、ページの外側です。サイト制作の検収では、目に見えるページ以外にも受け取るものがあります。
- 依頼の範囲に含めていた画像やデザインの元データ
- サーバーやCMS(ページを更新するための管理画面)のログイン情報
- 更新のしかたなど、操作説明の資料(依頼に含めていた場合)
何を受け取るべきかは、契約や依頼の内容によって変わります。一覧はサイト納品時に受け取るデータ・アカウント一覧|引き継ぎ漏れを防ぐにまとめているので、自社の依頼内容と照らして使ってください。
具体例:検収基準を納品の前に共有する
ある会社のWEB担当者は、採用ページのリニューアルを制作会社に依頼したとき、デザインが固まった段階で、次のような短いメモを送りました。
納品時は、以下の観点で確認させていただく予定です。
・表示:PCとスマホ(iPhone・Android各1台)で崩れがないこと
・動き:ページ内リンクと応募フォームが正しく動き、応募メールが採用担当に届くこと
・中身:募集要項の文言・給与などの数字が、お渡しした原稿どおりであること
・データ:差し替え用の写真データと、更新手順のメモをいただけること
確認期間は、納品から5営業日ほどいただけると助かります。
これを先に送っておいたことで、制作会社は納品前に同じ観点で自社チェックをしてくれました。納品後の指摘は2件だけ。しかもどちらも「この基準のこの項目」と伝えられたので、やり取りは短く済みました。
ここで一つ、検収のときに意識したいのが、「不具合」と「追加の要望」を分けて伝えることです。
- 不具合:決めた基準や依頼の内容と違っている所(例:原稿と給与の数字が違う)
- 追加の要望:基準は満たしているが、変えたくなった所(例:やっぱりボタンの色を変えたい)
不具合は直してもらう前提で伝えて大丈夫です。追加の要望は、別の一覧にして「ご相談です」と添えると、制作会社も見積もりの要否を判断しやすくなります。この線引きは「追加費用です」を減らす|見積もり前に確認したい5つの境界ともつながっています。
補足:検収の期間や、検収後に見つかった不具合をどう扱うか(いわゆる契約不適合の扱い)は、契約書で決められていることが多いです。また、会社の規模や取引の内容によっては、取適法(2026年1月に下請法から改正)などのルールが関わる場合もあります。期間や扱いに迷ったら、契約書を確認し、必要に応じて社内の法務・経理の担当者にも相談してください。
あなたへの影響
- 「どこまで見ればいいのか」で止まっていた時間が、確かめる項目を順に消していく時間に変わる。
- 指摘を「この観点のこの項目」と伝えられるので、制作会社とのやり取りが短く、角が立ちにくくなる。
- 「OKと言ったあとで何か見つかったら」という不安が小さくなり、自信を持って返信できる。
- 一度作った基準は、次のページ追加やバナー制作でも使い回せる。
明日やること
- いま進んでいる外注の案件を1つ思い浮かべ、4つの観点のうち、その案件で必要なものに丸をつける(バナー1枚なら「表示」と「中身」だけ、でも大丈夫です)。
- 丸をつけた観点ごとに、確かめる項目を2〜3個ずつ書き出す。
- 次のやり取りのときに、「納品時はこの観点で確認する予定です」と、制作会社に一言添えて共有する。
チェックリスト
まずは最初の1つができれば合格です。残りは案件に合わせて、必要な所だけで大丈夫です。できないことに×は付けなくて構いません。
まずはこれだけ(必須)
- 次の納品で見る観点(表示・動き・中身・データ)を、1つ以上決めた
できれば(推奨)
- パソコンとスマホの2つの画面で、表示を確かめた
- リンク・ボタンをひととおり押し、フォームはテスト送信して受信まで確かめた
- 数字と固有名詞を、原稿と1つずつ突き合わせた
- 指摘を「不具合」と「追加の要望」に分けて伝えた
慣れてきたら/必要があれば(任意・なければスキップ可)
- 検収基準のメモを、納品前に制作会社と共有した
- 受け取るデータ・アカウントの一覧と照らし合わせた
- 検収の期間や、検収後の不具合の扱いを契約書で確認した
- 作った基準をテンプレにして、次の案件でも使えるようにした

検収は、相手の仕事にケチをつける作業ではありません。一緒に作ったものを、一緒に「完成」と言うための確認です。物差しを先に渡しておけば、制作会社も同じ所を見てくれるようになります。
「たぶん大丈夫」で返信してきたこれまでも、限られた時間の中で精一杯見てきた結果です。次の納品では、4つの観点のうち1つだけでも決めてから開いてみましょう。それだけで、「これでOK」の一言が、ずっと言いやすくなります。
※本記事は一般的な実務の考え方をまとめたものです。検収の方法・期間や不具合の扱いは、契約内容や取引条件によって異なります。実際の判断は、契約書の記載と制作会社との確認、必要に応じて社内の担当部署への相談をもとに行ってください。
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うちの案件ではどこまで見ればいいか、というご相談はお問い合わせから気軽に声をかけてくださいね。一緒に考えていきましょう。