
「追加費用です」を減らす|見積もり前に確認したい5つの境界
制作が折り返しに来たころ、制作会社から一通のメール。 「ご依頼の採用ページの写真撮影ですが、お見積もりの範囲外のため、別途お見積もりとなります」。 えっ、それも入っていると思っていたのに——。上司にどう説明しよう、と画面の前で手が止まってしまう。そんな経験、ありませんか。
こういうとき、制作会社が後出しをしているとは限りませんし、あなたの確認が甘かったわけでもありません。多くの場合は、見積もりの「どこまでが含まれるか」という線引きが、お互いの頭の中で少しずつ違っていただけです。その線を、見積もりの前に一緒に言葉にしておく。今日はそのための確認ポイントを整理します。
結論:追加費用が出やすいのは、だいたい次の5つの「境界」です。
1. 原稿・写真・素材は誰が用意するか
2. ページ数をどう数えるか
3. 修正は何回・どの段階まで含まれるか
4. 機能や外部サービスとの連携はどこまでか
5. 公開作業と、公開後の対応はどこまでか
この5つを見積もり依頼の段階で「含む/含まない/要相談」に分けて書いてもらうだけで、「追加です」の多くは事前に見えるようになります。全部を完璧に詰めなくて大丈夫です。まずは1つ目の「素材は誰が用意するか」から確認してみましょう。
何が起きているのか:「追加費用」は線引きのズレから生まれる
制作の途中で追加費用の話が出てくるのには、よくある理由があります。
- 見積書の書き方が「一式」になっている:「下層ページ制作 一式」のように書かれていると、何ページまで、何が含まれるのかが読み取れません。お互いに「普通はここまで」と思っている範囲が違うまま進んでしまいます。
- 依頼する側が「当然含まれる」と思っている作業がある:写真の撮影や、原稿の手直し、旧サイトからの記事の移し替えなどは、発注側からは見えにくい作業です。制作会社にとっては別の工程でも、依頼する側には「サイトを作る作業の一部」に見えます。
- 途中で要望が少しずつ増える:社内の確認を重ねるうちに「ここにもボタンを」「このページも追加で」と要望が増えるのは、ごく自然なことです。ただ、そのたびに見積もりの範囲から少しずつはみ出していきます。
どれも、誰かが悪いわけではありません。制作会社も、依頼内容が曖昧なまま見積もりを出すときは、「このくらいだろう」と前提を置いて金額を出しています。その前提を見積書に書いてもらうのが、いちばん確実な予防策です。
見積もり前に確認したい5つの境界

ここからは、追加費用が出やすい5つの境界を順に見ていきます。見積もりを依頼するときに、それぞれ「含む/含まない/要相談」で答えてもらうイメージです。
1. 原稿・写真・素材は誰が用意するか
いちばん追加費用になりやすいのがここです。文章を書くのは誰か、写真は撮影するのか手持ちを使うのか、図やイラストは誰が作るのか。
- 原稿:自社で書いた原稿をそのまま流し込むのか、制作会社が文章を整える(リライトする)のか、取材して一から書くのか。
- 写真:自社で用意した写真を使うのか、撮影を依頼するのか、素材サイトの写真を使うのか(その場合、購入費用はどちらが持つのか)。
- 図・イラスト・アイコン:新しく作るのか、既存のものを使うのか。
「原稿は自社用意」の一行があるだけで、金額の前提はかなりはっきりします。逆に、ここを決めないまま進めると、原稿が揃わずに進行が止まったり、途中で「では文章も書きましょうか(別料金で)」となったりしがちです。
2. ページ数をどう数えるか
「10ページ」と聞いて、何を思い浮かべるかは人によって違います。
- お知らせやブログの記事1本1本は、ページ数に数えるのか。
- 同じレイアウトで中身だけ違うページ(例:サービス紹介が5種類)は、1つの型(テンプレート)として数えるのか、5ページと数えるのか。
- お問い合わせの確認画面・完了画面、404ページ、プライバシーポリシーは含まれるのか。
見積もりをお願いするときは、ざっくりでいいのでページの一覧(サイトマップ)を添えておくと、数え方のズレがぐっと減ります。完璧な一覧でなくて大丈夫です。「今あるページ+増やしたいページ」を箇条書きにするだけでも十分伝わります。
3. 修正は何回・どの段階まで含まれるか
修正の回数そのものより、「どの段階での変更か」で追加になるかどうかが分かれることが多いです。
- デザイン案の段階での修正は、何回まで含まれるのか。
- デザインが確定し、実際にページを作り始めてからのレイアウト変更はどう扱われるのか。
- 公開直前の文言の差し替え(誤字の修正など)は含まれるのか。
一般的に、工程が進むほど変更の手間は大きくなります。デザイン案の段階なら一枚の画像を直すだけでも、組み上がったあとでは作り直しに近い作業になることがあるためです。「デザイン確定」のタイミングを、社内の確認とセットで決めておくと、途中の大きな変更を減らせます。
4. 機能や外部サービスとの連携はどこまでか
見た目は同じ「ボタン1つ」でも、裏側の作業量が大きく違うのが機能まわりです。
- お問い合わせフォーム:項目数、自動返信メールの有無、送信先の振り分け。
- 更新の仕組み(CMS):お知らせだけ自分で更新できればいいのか、すべてのページを自分で更新したいのか。
- 外部サービスとの連携:予約システム、地図、SNSの埋め込み、アクセス解析ツール(GA4など)の設定。
- 多言語対応:英語ページは翻訳まで含むのか、原稿は自社で用意するのか。
「できればこういうことがしたい」という希望は、見積もり前に全部出しておくのがおすすめです。予算に合わなければ、そのうえで優先順位をつけて削れば大丈夫です。あとから足すより、先に出して削るほうが、ずっと話が早く進みます。
5. 公開作業と、公開後の対応はどこまでか
作って終わり、ではないのがWEBサイトです。公開のまわりにも、見落としやすい作業があります。
- 公開作業:サーバーへのアップロード、ドメインの切り替え、旧サイトからのURLの引っ越し(リダイレクト設定)。
- 旧サイトからの移し替え:過去のお知らせや記事を、新しいサイトに移すのは誰か。何本まで含まれるのか。
- 公開後の対応:公開してから見つかった不具合の修正は、いつまで・どこまで対応してもらえるのか。軽い修正の依頼は、保守契約に含まれるのか別料金か。
とくに「旧サイトの記事の移し替え」は、本数が多いと大きな作業になります。今のサイトの記事数を一度数えておくだけでも、見積もりの精度が上がります。
具体例:同じ依頼でも、前提が書いてあるとこう変わる
ある会社のWEB担当・Bさんの例です(説明用の例です)。
これまで:「コーポレートサイトのリニューアル、10ページほどでお願いします」と依頼し、「下層ページ制作 一式」と書かれた見積もりで発注しました。進行の途中で、
- 採用ページの写真撮影は範囲外
- お知らせ記事80本の移し替えは範囲外
- デザイン確定後のレイアウト変更は別途
と、3回に分けて追加の相談が来ました。どれも制作会社の説明は筋が通っていたものの、上司への説明に苦労したそうです。
変えてから:次の案件では、依頼の段階でページの一覧と、5つの境界の質問を添えて送りました。返ってきた見積もりには「原稿・写真は貴社ご用意」「お知らせ移行は直近30本まで」「デザイン修正は2回まで」と前提が書かれていました。
- 撮影が必要なことが最初から分かったので、撮影費も含めて予算を取れた
- 移行の本数を見て、古いお知らせは移さないと社内で先に決められた
- 途中で出た追加の相談は1件だけ。しかも「前提の範囲外なので」と、お互いに納得して話ができた
追加費用がゼロになったわけではありません。でも、「想定外の追加」が「予定していた相談」に変わった。それだけで、社内への説明も、制作会社とのやり取りも、ずいぶん楽になったそうです。
あなたへの影響
- 見積もりの段階で、本当に必要な予算の全体像が見えるので、社内の予算申請がしやすくなる。
- 途中で「それは追加です」と言われても、前提が書いてあれば落ち着いて話し合える。
- 制作会社にとっても、前提がはっきりしている依頼は見積もりを出しやすく、関係がこじれにくい。
- 相見積もりのときも、同じ前提で比べられるので、金額の差の理由が分かりやすくなる。
明日やること
- 今の(またはこれからの)案件で、「原稿・写真は誰が用意するか」だけ、制作会社に確認する。
- サイトのページの一覧を、今あるページと増やしたいページに分けて箇条書きにしてみる。
- 次に見積もりをお願いするときは、下のひな形を依頼メールに貼り付けて、前提を書いてもらう。
お見積もりの際、以下の項目について
「含む/含まない/要相談」をお書き添えいただけますと助かります。
1. 原稿・写真・図の用意(当社/貴社/撮影・購入の有無)
2. ページ数の数え方(記事・同じ型のページ・確認画面などの扱い)
3. 修正の回数と、デザイン確定後の変更の扱い
4. フォーム・更新機能・外部サービス連携の範囲
5. 公開作業・旧サイトからの移行・公開後の不具合対応の範囲
チェックリスト
最初の1つができれば、まずは十分です。残りは案件に合わせて少しずつで大丈夫です。
まずはこれだけ(必須)
- 原稿・写真・素材を「誰が用意するか」を、見積もりの前に確認した
できれば(推奨)
- ページの一覧(今あるページ+増やしたいページ)を添えて見積もりを依頼した
- 修正の回数と、デザイン確定後の変更の扱いを確認した
- やりたい機能・連携の希望を、見積もり前に全部出した
- 見積書に「一式」の項目があれば、中身を聞いた
慣れてきたら/時間があれば(任意・なければスキップ可)
- 旧サイトから移す記事の本数を数えた
- 公開後の不具合対応の期間と範囲を確認した
- 追加が出そうなときは「作業の前に金額を知らせてもらう」ことを取り決めた
- 確認した前提を、議事録やメールで残した

追加費用の話は、言い出す側も、言われる側も、少し気まずいものです。 でも、見積もりの前に「どこまでが含まれますか」と一緒に確かめておけば、その気まずさの多くは先に片づけられます。それは相手を疑うことではなく、同じ地図を持って進むための準備です。
まずは次のやり取りで、「原稿と写真は、どちらで用意する前提ですか?」と一言だけ聞いてみましょう。それだけで、もう一歩前に進んでいます。
※本記事は一般的な実務の考え方をまとめたものです。見積もりの項目や追加費用の扱いは、制作会社や契約内容によって異なります。実際の条件は、見積書・契約書の記載と、制作会社との確認をもとに判断してください。
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