
制作会社の担当者が交代したら|引き継ぎで確認しておく3つのこと
「いつもお世話になっております。私事ですが、来月から別の部署へ異動することになりました。後任は〇〇が担当いたします」
制作会社の担当者から、こんなメールが届いた朝。 サイトのことを何でも分かってくれていた人がいなくなる。去年の改修のいきさつも、「ここは触らないで」と頼んだ場所も、あの人の頭の中にあったのに――。少し心細くなりますよね。
先にお伝えしておくと、担当者の交代は、どの制作会社でも普通に起きることです。そして、交代のタイミングは、実はこれまでの「なんとなく」を整理し直せるいい機会でもあります。
今日は、交代の前後で何を確認しておけば話が途切れないかを、一緒に順番に整理していきましょう。
結論:制作会社の担当者が交代するときは、次の3つを確認すれば大丈夫です。
① 受け取る:前任者から、進行中の作業・約束ごと・過去の経緯を一覧でもらう。
② 確かめる:自社サイトの管理権限や契約内容が、前任者「個人」に結びついていないかを確かめる。
③ つなぐ:新しい担当者と最初の打ち合わせを持ち、自社側からも「これまで」と「これから」を1枚で渡す。
引き継ぎは制作会社の仕事ですが、こちらから聞いておくことで抜けがぐっと減ります。
担当者の交代で、何が起きやすいのか
担当者が代わっても、契約や会社としての責任は変わりません。それでも、交代の前後には次のような「すき間」が生まれやすくなります。
- 口約束が消える:「次の改修のときに、ついでに直しておきます」「この程度なら保守の範囲で対応します」といった、メールや議事録に残っていない約束が、後任に伝わらない。
- 経緯が消える:「このページは法務の確認を通しているので文言を変えない」「このプラグインは以前不具合が出たので更新を止めている」など、理由のある判断が、理由ごと忘れられる。
- 進行中の作業が宙に浮く:見積もり中・修正中・確認待ちの案件が、どこまで進んでいたのか分からなくなる。
- 連絡先が古いまま残る:前任者の個人メールアドレスやチャットのアカウントあてに連絡を送り続けてしまう。
- アカウントが個人にひもづいている:サーバーやドメイン、GA4などの管理画面に、前任者個人のアカウントだけが管理者として登録されている。
どれも、前任者や後任者が悪いわけではありません。人の頭の中にあった情報は、交代のときにいちばん抜けやすい。それだけのことです。だからこそ、交代が決まった時点で、こちらから一歩だけ動いておくと安心です。
担当者交代の引き継ぎで確認する3ステップ

① 受け取る:前任者から「進行中・約束・経緯」を一覧でもらう
いちばん大事なのは、前任者がまだいるうちに聞いておくことです。異動の場合は社内に残っていることも多いですが、退職の場合は連絡が取りにくくなります。交代の連絡が来たら、早めに次のようなメールを送ってみましょう。
〇〇さん
ご連絡ありがとうございます。これまで本当にお世話になりました。
後任の方にスムーズにお願いできるよう、お手数ですが、交代までに次の3点を一覧でいただけますか。
1. 現在進行中・確認待ちの作業(内容と、どこまで進んでいるか)
2. 弊社とお約束いただいていること(口頭のものも含めて)
3. 弊社サイトで「理由があってこうしている」設定や判断(触らない場所・更新を止めているものなど)
弊社側でも把握している内容をまとめてお送りしますので、突き合わせられれば幸いです。
ポイントは、「口頭のものも含めて」とひと言添えることです。メールに残っていることは後任も探せますが、口約束は前任者にしか分かりません。
もらった一覧は、自社側の記録(過去のメール・議事録・依頼書)と突き合わせます。食い違いがあれば、この段階で前任者に確認しておきましょう。日ごろから依頼の記録を残しておくと、ここがぐっと楽になります(「言った言わない」を防ぐ依頼書・要件メモの残し方)。
② 確かめる:管理権限と契約が「個人」にひもづいていないか
次は、自社側の守りの確認です。担当者が代わっても困らないように、サイトの大事な鍵が、前任者個人ではなく会社(自社または制作会社という組織)にひもづいているかを見ます。
| 確認するもの | 見るところ | 気にしたいこと |
|---|---|---|
| サーバー・ドメイン | 契約者・管理者の名義と連絡先メールアドレス | 前任者の個人アドレスが連絡先になっていないか |
| CMS(WordPressなど) | 管理者ユーザーの一覧 | 前任者個人の管理者アカウントが残ったままになっていないか |
| GA4・Search Console | 管理画面の「ユーザー」や「権限」の一覧 | 自社のアカウントが管理者として入っているか |
| GTM(タグマネージャー) | アカウントとコンテナのユーザー一覧 | 自社が管理権限を持っているか |
| 契約書・保守契約 | 契約の当事者、対応範囲、連絡窓口 | 窓口が個人名だけで書かれていないか |
| 連絡手段 | メールのCC、チャットのグループ | 前任者あての連絡が残っていないか |
ここで見つかったことは、その場で直さなくて大丈夫です。まずは一覧にして、新しい担当者との打ち合わせで「これはどうしましょうか」と相談すれば十分です。ただ、前任者だけが管理者になっているものがあれば、交代前に自社のアカウントを管理者として追加してもらうようお願いしておくと安心です。
前任者のアカウントを外すかどうかは、制作会社の運用ルールもあるので、相談して決めましょう。パスワードを共有していた場合の見直し方は制作会社と共有したパスワードの見直し方、名義の確認の詳しい手順はドメイン・サーバーの名義と管理アカウントの確認にまとめています。
③ つなぐ:新しい担当者と最初の打ち合わせで「1枚」を渡す
後任の方は、前任者からの引き継ぎを受けていても、あなたの会社の事情までは、まだ知りません。最初の打ち合わせ(オンラインで30分ほどでも十分です)を設けて、自社側からも1枚のメモを渡しましょう。
1枚に書くのは、次の4つだけです。
- 自社サイトの目的:何のためのサイトか(問い合わせを増やしたい、採用につなげたい、など)
- これまでの大きな経緯:いつ作って、いつ改修したか。今のサイトで大事にしていること
- 進行中・予定している作業:①で突き合わせた一覧
- やり取りのルール:連絡手段、急ぎのときの連絡先、定例の頻度、見積もりが必要になる目安
打ち合わせでは、②で見つけた「確認したいこと」もあわせて相談します。最後に、話したことを議事録にして、双方で持っておくところまでできれば、引き継ぎはひと区切りです(制作会社との定例の進め方と議事録の残し方)。
新しい担当者も、知らない案件を受け取って緊張しているかもしれません。「一緒にいい形にしていきたい」と伝えるひと言が、これからの関係をやわらかくしてくれます。
具体例:「次の改修でついでに」が消えかけた話
ある会社のWEB担当者のケースです。制作会社の担当者が退職することになり、交代までの期間は2週間でした。
交代の連絡を受けて、①のメールを送ったところ、前任者からの一覧にはこう書かれていました。
- 進行中:採用ページの文言修正(確認待ち)
- 約束ごと:特になし
- 理由のある設定:お問い合わせフォームのプラグインは、以前不具合が出たため更新を保留中
自社側のメールと議事録を見直すと、半年前の定例でこんな一文が見つかりました。
「トップページのスマホ表示の崩れは、次回の改修時にあわせて無償で調整します」
前任者に確認すると「たしかにお約束していました」とのこと。一覧に追記してもらい、後任の方にも共有されました。
さらに②の確認では、GA4の管理者が前任者個人のアカウントだけになっていることが分かりました。交代前に自社のアカウントを管理者として追加してもらい、前任者のアカウントは新しい担当者と相談のうえで外すことにしました。
最初の打ち合わせでは、1枚のメモをもとに30分ほど話し、議事録を共有。後任の方からは「経緯が分かって助かりました」と言われたそうです。もし何も聞かずに交代を迎えていたら、スマホ表示の約束も、GA4の権限も、困ったときに初めて気づくことになっていたかもしれません。
確認しておくと、何が変わるか
- 約束が守られやすくなる:口約束も一覧になり、後任の方が「知らなかった」状態になりにくくなります。
- サイトの鍵を自社で持てる:管理権限が個人にひもづいていない状態になれば、今後また担当が代わっても慌てずに済みます。
- 新しい担当者との関係が早く温まる:最初に経緯を共有しておくと、説明し直す手間がぐっと減ります。
- 制作会社の乗り換えにも強くなる:引き継ぎの一覧と権限の整理は、そのまま将来の備えにもなります(制作会社を乗り換えるときの準備)。
担当者の交代は、関係が終わるタイミングではなく、関係を整え直すタイミングです。
明日やること
- 前任者に、「進行中・約束ごと・理由のある設定」の3点を一覧でもらうメールを送る
- 自社側の過去のメール・議事録・依頼書から、約束ごとを拾い出しておく
- サーバー・ドメイン・CMS・GA4・Search Console・GTMの管理者一覧を開いて、前任者だけが管理者になっているものがないかを見る
- 新しい担当者との最初の打ち合わせ(30分)の日程を相談する
チェックリスト
受け取る
- 前任者から、進行中・確認待ちの作業の一覧をもらった
- 口頭のものも含めて、約束ごとの一覧をもらった
- 「理由があってこうしている」設定や判断を聞いた
- もらった一覧を、自社側のメール・議事録と突き合わせた
確かめる
- サーバー・ドメインの名義と連絡先メールアドレスを確認した
- CMSの管理者ユーザーの一覧を確認した
- GA4・Search Console・GTMに、自社のアカウントが管理者として入っていることを確認した
- 契約書・保守契約の連絡窓口と対応範囲を確認した
- メールのCCやチャットのグループから、前任者あての連絡先を見直した
つなぐ
- 新しい担当者との最初の打ち合わせを設けた
- 目的・経緯・進行中の作業・やり取りのルールを1枚にまとめて渡した
- 打ち合わせの内容を議事録にして、双方で共有した
全部を一度に終わらせなくて大丈夫です。前任者がいるうちにしか聞けない「受け取る」の4つだけ、先に済ませておけば十分です。
これまでのサイトのことを一番よく知っているのは、実は毎日サイトを見ているあなたです。その記憶と記録があれば、担当が代わっても、サイトはちゃんと続いていきます。まずは明日、前任者に一通のメールを送るところから始めてみましょう。

よければ、こちらも
- 納品時に受け取るべきデータ・アカウント一覧|引き継ぎ漏れを防ぐ
- ドメイン・サーバーの名義と管理アカウントの確認
- 制作会社と共有したパスワードの見直し方
- サイトの保守契約に何が含まれるか確認するチェックポイント
- 制作会社と連絡が取れないときの確認と備え
「うちの場合、何から聞けばいいんだろう?」と迷ったら、お問い合わせから気軽に声をかけてくださいね。一緒に整理していきましょう。
本記事は一般的な実務情報です。具体例は説明のための一例で、引き継ぎの進め方や管理権限の扱いは、制作会社との契約内容や各社の運用ルールによって異なります。各サービスの管理画面・機能・名称は更新されることがあります。最終的な設定や判断は、契約内容と各サービスの最新の公式情報でご確認ください。