サーバー会社から届いた移転の案内メールを画面に開き、机に広げたメモに確認事項を書き出している企業のWEB担当者

サーバー移転を外注するときの段取り|ダウンタイムとメールの確認

サーバー会社から、こんなメールが届くことがあります。

「ご利用中のプランは、来年○月をもってサービスを終了いたします」

あるいは制作会社から「今のサーバー、表示が重いので移しませんか」と提案されることもあります。どちらにしても、作業をするのは向こうです。見積もりも出てきました。ここまでは、いいのです。

問題は、社内でこう聞かれた瞬間です。

「その日、ホームページは見られなくなるの?」 「メールは? 止まったら困るんだけど」

……答えられない。

技術のことは外注先に任せているのだから、答えられなくても仕方がない。そう思う一方で、聞かれたのは自分だという事実は残ります。移転当日に何かあったとき、真っ先に電話が鳴るのも、たぶん自分の席です。

でも、大丈夫です。ここで必要なのは、サーバーの技術知識ではありません。「何が、いつ、どのくらい止まる可能性があるか」を社内の言葉に翻訳して、先に伝えておくこと。それだけで、当日の空気はまったく変わります。

結論:サーバー移転で担当者がやることは、次の4つです。
①移すものを数え上げる(サイトだけでなく、メールとフォームも)
②切り替えの日時と「止まるかもしれない時間」を先に決めて、社内に伝える
③切り替え当日、自分の目で「表示」と「メール」を確かめる
④旧サーバーは、すぐ解約せず1〜2週間残す

設定作業はすべて外注先の仕事です。あなたの仕事は、社内の事情を知っている人にしかできない部分——つまり①と②です。

何が起きているのか

移転は「引っ越し」ではなく、しばらく二重生活になる

サーバー移転と聞くと、荷物をトラックに積んで、ある瞬間にパタンと新居へ切り替わる——そんなイメージを持ちやすいところです。実際は、少し違います。

サイトの住所(ドメイン)と、実際にデータが置いてあるサーバーは、DNSという仕組みでひもづいています。インターネット上の住所録のようなもの、と考えてください。移転のときは、この住所録を「新しいサーバーを見てください」と書き換えます。

ところが、この書き換えは世界中に一斉に反映されるわけではありません。各社のインターネット回線側に、少し前の住所録が一時的に残るためです。結果として、切り替え直後にはこんな状態が生まれます。

この「人によって見ているものが違う期間」は、数十分で終わることもあれば、環境によっては1〜2日かかることもあります。

だから、サイトが真っ暗になる時間は、実はほとんどありません。新旧どちらかは表示されているからです。安心材料でもある一方で、ここに落とし穴が生まれます。

この期間に古いサーバー側で起きたことは、新しいサーバーに反映されません。問い合わせフォームから送られたメールが旧サーバーに届いていた、この期間に更新したお知らせが新サイトに無い——移転の相談でよく出てくるのは、こうした「うっかり」のほうです。

いちばん見落とされるのは、サイトではなくメール

もうひとつ、事前に確かめておきたいことがあります。

独自ドメインのメール(〜@自社ドメイン)を、同じサーバーで使っていないか。

中小企業のサイトでは、サイトとメールを同じ契約でまかなっているケースがかなり多くあります。この場合、サーバーを移すと会社のメールも一緒に引っ越します。

そうなると、話は「ホームページの移転」では収まりません。

サイトが1日見づらいのは、正直なところ、多くの会社では致命傷になりません。でも全社のメールが半日止まると、それは事故になります。移転の話が出たら、いちばん最初に確かめたいのはここです。

最初の一問:「今回の移転で、メールも一緒に移りますか。移る場合、社員のメールソフトの設定変更は必要ですか」

この質問を早い段階で投げておくと、段取りの重さが最初に見えます。

「誰がどこまでやるか」の隙間で抜けが起きる

移転には、いくつもの関係者が出てきます。制作会社、サーバー会社、社内の情報システム担当、そしてあなた。

それぞれが自分の担当をきちんとやっていても、担当の境目にあるものは、誰も拾わないまま残りがちです。

これは誰かの手抜きではなく、全体を見ている人がいなかっただけのことです。そして残念なことに、全体を見られる立場にいるのは、たいてい社内のあなたひとりです。

手順を小さく分ける

移転日の1か月前から、4つに分けます。全部を今日やる必要はありません。

①【1か月前】移すものを、紙に数え上げる

まず「そのサーバーの上で、何が動いているか」を書き出します。頭の中で「サイトとメールかな」と数えるのではなく、表計算ソフトで1枚の表にするのがおすすめです。列は4つで足ります。

移すものいまの状態移転後どうする誰がやる
サイト本体(CMS・ファイル一式)WordPressそのまま移す制作会社
データベース—そのまま移す制作会社
メールアカウント38個退職者分6個は移さないサーバー会社+情シス
問い合わせフォームの送信先代表アドレス変更なし。要テスト制作会社
SSL証明書(httpsの鍵)有効期限は来年3月新サーバーで取り直しサーバー会社
採用サイト(別サブドメイン)別の制作会社が管理要相談未定

数え上げのときに、特に忘れやすいものを挙げておきます。

すぐに全部は分からなくて大丈夫です。分からない行は「未定」と書いておく。その「未定」の一覧が、そのまま制作会社への質問リストになります。

サーバーを移すとサイトとメールとフォームの3つが一緒に動くことを示した図
サーバーを移すと、この3つが一緒に動きます。「サイトの移転」だと思っていると、メールで驚くことになります

②【2週間前】切り替え日時を決めて、社内に先に伝える

日時を決めるときの目安は、2つです。

目安1:金曜の夜と、月末月初は避ける。

「業務に影響が少ないから週末に」と考えたくなりますが、何かあったときに制作会社もサーバー会社も動きにくい時間帯です。火曜〜木曜の業務終了後にしておくと、翌日の朝に落ち着いて確認ができて、困ったときにすぐ連絡が取れます。請求書のやり取りが集中する月末月初も、メールが止まると影響が大きいので外しておきます。

目安2:切り替えの1週間前に、「TTLを短くしておいてください」と伝える。

TTLというのは、先ほどの住所録が各社の回線側にどれくらい残るかの時間設定です。これをあらかじめ短くしておくと、切り替えの反映が早く進みます。設定するのはサーバー会社や制作会社なので、こちらは「お願いします」と言うだけで大丈夫です。専門用語をそのまま使って構いません。伝わります。

そして、日時が決まったら社内に先に伝えます。これが、この記事でいちばんお伝えしたいことです。

社内アナウンス文例(そのままお使いいただけます)

件名:【○月○日(水)18時〜】ホームページとメールのサーバー移転のお知らせ

お疲れさまです。○○(担当部署)です。
下記の日程で、ホームページとメールを新しいサーバーへ移す作業を行います。

■日時:○月○日(水)18:00 〜 21:00(作業)
■影響が出る可能性のあるもの
・ホームページ:作業中〜翌日にかけて、一時的に表示が不安定になることがあります
・メール:作業中は送受信が遅れる場合があります。翌日午前中までは、重要なメールの返信が届いているかご確認ください
■お願い
・○月○日〜○日は、ホームページの更新依頼をお控えください
・お客様への大切なご連絡は、可能であれば○月○日中にお願いします
・翌朝、メールの送受信ができない場合は○○(担当)までご連絡ください

ご不便をおかけしますが、よろしくお願いいたします。

この一通があるかないかで、当日の意味が変わります。事前に伝えてあれば「予定」、伝えていなければ「障害」です。やっていることは同じなのに、社内での受け取られ方はまったく別のものになります。

もし作業時間がはっきり分からなければ、外注先にこう聞いてください。「社内に告知したいので、影響が出る可能性のある時間帯を教えてください」。目的を添えると、答えやすい聞き方になります。

③【当日〜翌日午前】自分の目で確かめる

作業完了の連絡が来たら、確認します。特別なツールは要りません。5分でできます。

ひとつだけコツがあります。社内のパソコンだけで見ないこと。

社内の回線からは、まだ古い住所録が使われていて、旧サーバーが表示されていることがあります。「表示されているから大丈夫」と思ったら、実は古いほうを見ていた——というのは、この段階でよくある勘違いです。スマホをWi-Fiから外して、携帯回線で見る。これだけで、別の経路からの見え方を確かめられます。

確認する順番は、こうです。

  1. トップページと主要ページが表示されるか(社内PCと、Wi-Fiを切ったスマホの両方で)
  2. アドレス欄に鍵マークが出ているか(httpsが有効か。移転時はSSL証明書を取り直すため、ここが抜けやすいところです)
  3. 問い合わせフォームからテスト送信して、受信できるか
  4. 会社の代表アドレスで、外部と1往復してみる(自分の個人アドレスへ送って、返信を受け取る)
  5. CMSにログインして、お知らせを1つ開いて保存できるか
  6. 画像やダウンロード用PDFが表示されるか(数点でかまいません)

3と4は、必ずやってください。サイトが見えることと、メールが届くことは別の話です。フォームからのテスト送信の詳しいやり方はフォームから送ったのに届かないを防ぐ送信テストにまとめてあります。

なお、httpsの鍵マークが出ない、あるいは「一部安全でない」と表示される場合は、ページの中に古いアドレス(http)のままの画像などが残っている可能性があります。この見つけ方は混在コンテンツの直し方が使えます。

そして翌日の午前中。もう一度、同じ確認を繰り返します。夜のうちには反映されていなかった経路が、朝には切り替わっているためです。あわせて、社内で「メールが受信できない」という声が上がっていないかも見ておきます。

もしサイトが表示されないときは、あわてずサイトが表示されないときの切り分け手順の順番で見ていくと、状況を整理してから外注先に連絡できます。

④【1〜2週間後】旧サーバーを、そっと止める

移転が終わると、つい「もう解約していいですよね」と言いたくなります。少し待ってください。

旧サーバーは、1〜2週間残しておきます。理由は2つあります。

理由1:切り戻しの保険になる。移転後に「あのページが表示されない」「あのPDFが無い」と気づくことがあります。旧サーバーが生きていれば、そこからデータを取り直せます。消してしまうと、バックアップからの復元という手間の多い作業になります。

理由2:旧サーバー側に届いたメールを拾える。切り替え期間中、一部のメールが旧サーバーに入っていることがあります。1〜2週間後に一度、旧サーバー側のメールボックスを確認しておくと、「問い合わせを見落としていた」という事態を避けられます。

そして最後に、解約の手続きを予定に書き込むこと。残しておいたことをそのまま忘れて、1年分の料金を二重に払っていた——という話は珍しくありません。サイト運用の年間スケジュールに「○月○日:旧サーバー解約」と書いておけば、それで済みます。

具体例:ある会社の移転

社員60人の建材商社。10年使ってきたサーバーのプランが、来年終了するという案内が届きました。WEB担当は総務との兼務でひとり。

1か月前。表を作りながら数え上げたところ、知らなかったことが2つ出てきました。ひとつは、3年前に作った採用サイトが同じサーバーのサブドメインで動いていたこと。制作会社が別だったため、今回の見積もりには入っていませんでした。もうひとつは、メールアカウントが38個あり、うち6個は退職した社員のものだったこと。

採用サイトについては、制作会社に確認したうえで、同じタイミングで移してもらうことになりました。別々に移していたら、二度手間になっていたところです。退職者の6アカウントは、上長に確認して移さないことにしました。

2週間前。切り替えを水曜の18時に決定。前の週にサーバー会社へ「TTLを短くしておいてください」と依頼。社内には、上の文例のような案内を全社メールで流しました。

当日18時。作業完了の連絡は20時30分。社内のパソコンで見ると、いつもどおりサイトが表示されています。念のためスマホのWi-Fiを切って開いてみると、こちらも表示される。フォームのテスト送信もOK。代表アドレスから自分のスマホへ送って、返信も届きました。

翌朝9時20分。営業部から「メールが受信できない」と連絡が入りました。確認すると、1台だけメールソフトの設定が古いままでした。事前にサーバー会社からもらった設定手順書を社内に配っておいたので、5分で解決。

2週間後。旧サーバーのメールボックスを開くと、問い合わせが3件残っていました。フォームの送信先設定に古い記述が残っていたためです。すぐに直し、3件とも返信できました。1件は、その後に見積もり依頼へつながっています。

3週間後。旧サーバーを解約。

振り返ると、特別なことは何もしていません。表を1枚作って、社内に1通メールを出して、当日にスマホで見た。それだけです。それでも、採用サイトの二度手間と、問い合わせ3件の取りこぼしは防げています。

あなたへの影響

この段取りを通すと、変わることが3つあります。

1つ目は、当日の電話が減ることです。事前に社内へ告知しておくと、「メールが遅い」と感じた人も「ああ、今日だったな」と思ってくれます。同じ現象でも、知らされていれば問い合わせにはなりません。告知は、あなた自身を守る作業でもあります。

2つ目は、サーバーの中身が見えるようになることです。移転は、否応なく棚卸しをすることになるタイミングです。何が動いていて、誰がいくつメールアカウントを持っていて、どの契約が誰の名義か。ここで作った表は、移転が終わったあとも引き継ぎ資料としてそのまま使えます。一度きりの作業に見えて、実は資産が1枚残ります。

3つ目は、社内での見え方です。「ホームページの人」だと思われていた担当者が、会社の連絡インフラを守っている人として見えるようになります。メールが止まらなかったことは、誰も褒めてくれません。でも、止まらなかったのは偶然ではないことを、あなた自身は知っています。

明日やること

移転の話がまだ具体的でなくても、今日から動けることがあります。30分で終わります。

  1. 契約中のサーバーの管理画面に、自分のIDでログインできるか確かめる(5分/ログインできない場合は管理権限が自社名義になっているかから確認します)
  2. 管理画面で、メールアカウントの一覧を出して数える(10分/退職者のアドレスが残っていないかも見ておきます)
  3. サブドメインの一覧を見て、知らないサイトが動いていないか確かめる(5分)
  4. 制作会社かサーバー会社に、質問を一通送る(10分)

4の文面は、これで十分です。

「サーバーの移転を検討しています。事前に社内へ案内したいので、次の2点を教えていただけますか。
①今回の移転で、メールも一緒に移りますか。移る場合、社員側の設定変更は必要でしょうか。
②影響が出る可能性のある時間帯は、どのくらいを見ておけばよいでしょうか。」

移転の予定がない方も、1と2は年に一度やっておくと安心です。いざ移転となったときの下調べが、そのまま済んでいることになります。あわせてドメイン・サーバーの年間棚卸しも、同じ日にまとめてしまうと効率的です。

今日のチェックリスト

最低ライン(ここだけでも、移転の事故はかなり減ります)

余裕があれば

全部にチェックが入らなくて大丈夫です。上の7つが済んでいれば、大きな事故はほとんど防げています。

締めに

サーバー移転は、うれしい仕事ではありません。移し終えても、サイトの見た目は何も変わらない。社内から「新しくなったね」と言われることもない。うまくいって当たり前、何かあれば自分のところに電話が来る——そういう種類の仕事です。

でも、だからこそ言っておきたいことがあります。

止まらなかった一日は、誰かが段取りをした一日です。

朝、社員がいつもどおりメールを開けたこと。お客様からの問い合わせが、いつもどおり届いたこと。その裏に、表を1枚作って、1通の告知を出して、夜にスマホで確認した人がいる。それは十分に、会社を支える仕事です。

そして、もし当日に何か抜けが見つかっても、たいていは後から直せます。旧サーバーを残しておけばデータは戻せますし、フォームの送信先も、メールソフトの設定も、あとから直せます。取り返しのつかない失敗は、思っているよりずっと少ないのです。

移転の翌朝、いつもどおり社員がメールを開けていることを確認して、静かに安心している企業のWEB担当者
何ごともなかった翌朝は、誰かが段取りをした結果です

今日、メールアカウントの数を数えられたなら、その移転はもう半分うまくいっています。

※本記事は一般的な実務の考え方をまとめたものです。移転の手順・所要時間・設定方法は、契約しているサーバー会社やサイトの構成によって大きく異なります。実際の作業内容や影響範囲は、サーバー会社・制作会社の最新の案内でご確認ください。

よければ、こちらも

作業の前後には自社サイト更新・公開前チェックリストを横に置いておくと安心です。「見積もりの内容がこれで妥当か分からない」というときは見積書のどこを見るかも参考にしてください。うちの場合はどうすれば、というご相談はお問い合わせから気軽に声をかけてくださいね。一緒に考えていきましょう。

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