
問い合わせから受注までの歩留まり|どこで止まるかを見つけて直す
「先月、問い合わせ12件ありました」 月例の会議でそう報告したら、上司に聞かれました。「で、そのうち何件が仕事になったの?」 ……答えられませんでした。フォームの件数は毎月数えているのに、その先のことは営業さんに任せきりで、追いかけたことがなかったからです。
これ、WEB担当ではとてもよくある場面です。問い合わせの「その先」は営業や担当部署の仕事なので、WEB担当が知らないのは、ごく自然なこと。でも、その先を少しだけ一緒に数えてみると、「サイトのどこを直せば、仕事につながる相談が増えるか」がぐっと見えやすくなります。
今日は、問い合わせから受注までの歩留まり(それぞれの段で、次に進んだ割合)を見て、改善の一手を決めるまでを、一緒に順番に整理していきましょう。
結論:問い合わせから受注までの歩留まりは、次の4ステップで見られます。
① 段を決める:「問い合わせ → 有効な問い合わせ → 商談 → 受注」の4段に分ける。
② 数える:営業と一緒に、直近3〜6か月分を段ごとに数える。
③ 割合を出す:段から段へ進んだ割合を計算し、いちばん落ちている段を見つける。
④ 一手を決める:その段について、WEB側でできることを1つだけ試す。
必要なのはスプレッドシート1枚と、営業担当との30分ほどの打ち合わせです。
問い合わせの「その先」で、何が起きているのか
問い合わせフォームの件数は、GA4のキーイベントやフォームの通知メールで数えられます。でも、そこで見えるのは「入口」まで。実際には、問い合わせのあとにこんな道のりがあります。
- 問い合わせ:フォーム・電話・メールで届いたすべての連絡
- 有効な問い合わせ:営業の売り込みや迷惑メッセージ、採用への応募などを除いた、仕事の相談
- 商談:打ち合わせ・ヒアリング・見積もり提出など、具体的な話に進んだもの
- 受注:契約・発注に至ったもの
それぞれの段で、少しずつ人が減っていきます。これを「歩留まり」と呼びます。減ること自体は自然なことで、全部が受注になる会社はありません。
大事なのは、どの段で、いちばん大きく減っているかです。
- 1→2で大きく減るなら:届く問い合わせの多くが、営業・迷惑・対象外の相談かもしれない
- 2→3で大きく減るなら:相談の中身が漠然としていたり、返信までに時間が空いて熱が冷めていたりするかもしれない
- 3→4で大きく減るなら:価格や条件が合わない相談が多い、比較検討で他社に決まっている、などが考えられる
どの段で止まっているかによって、直す場所がまったく変わります。だから、「問い合わせを増やそう」の前に、どこで止まっているかを見るのが近道なんです。
問い合わせから受注までの歩留まりを見る4ステップ

① 段を決める:自社の言葉で4段を定義する
まずは、上の4段を自社の言葉に置き換えます。会社によって「商談」の意味は少しずつ違うので、ここを営業と最初にそろえておくのが大切です。
| 段 | 定義の例(自社に合わせて調整) |
|---|---|
| 問い合わせ | フォーム・電話・メールで届いた連絡すべて |
| 有効な問い合わせ | 営業・迷惑・採用応募・既存のお客さまの事務連絡を除いたもの |
| 商談 | 打ち合わせをした、または見積もりを出したもの |
| 受注 | 契約・発注をいただいたもの |
「打ち合わせ」と「見積もり提出」のどちらを商談とするかなど、迷うところは営業がふだん使っている区切りに合わせると、あとで数字の話がかみ合いやすくなります。
② 数える:営業と一緒に、3〜6か月分を段ごとに
次に、直近3〜6か月の問い合わせを一覧にして、それぞれがどの段まで進んだかを記録します。列はこれくらいで十分です。
- 受付番号(または受付日)
- 入口(フォーム/電話/メール)
- 有効か(はい/いいえ)
- 商談になったか(はい/いいえ/検討中)
- 受注したか(はい/いいえ/検討中)
ここは、WEB担当ひとりでは埋められません。営業担当に「責めたいわけじゃなくて、サイトの直し方を考えたいんです」と一言そえて、30分だけ時間をもらいましょう。一覧を見せて、商談と受注の欄を一緒に埋めてもらうのがいちばん早いです。
数えるときのコツは3つあります。
- 問い合わせが届いた月でまとめる:受注は数か月後になることも多いので、「7〜9月に届いた問い合わせが、その後どうなったか」と、問い合わせの月を基準に数えます。
- 「検討中」は分けておく:まだ結論が出ていないものは、受注できなかったものに混ぜず、別に数えておきます。
- 個人情報は持ち出さない:会社名や担当者名をWEB担当の表に写す必要はありません。受付番号や受付日で突き合わせれば十分です。
③ 割合を出す:段から段へ進んだ割合を計算する
数がそろったら、段ごとに「次の段へ進んだ割合」を出します。計算は割り算だけです。
- 有効率 = 有効な問い合わせ ÷ 問い合わせ
- 商談化率 = 商談 ÷ 有効な問い合わせ
- 受注率 = 受注 ÷ 商談
この3つを並べて、いちばん低い段に印をつけます。それが、今いちばん人が減っている場所です。
ひとつ気をつけたいのは、件数が少ないと割合は大きくぶれることです。商談が5件しかないと、1件の差で受注率が20ポイントも動きます。月ごとの上下に一喜一憂せず、3〜6か月をまとめて見るくらいがちょうどいいと思います。
④ 一手を決める:いちばん減っている段に、WEB側でできることを1つ
最後に、いちばん減っている段について、WEB側でできることを考えます。受注の決め手は営業の仕事ですが、その手前の「どんな相談が、どんな状態で届くか」は、サイトで変えられる部分がたくさんあります。
| いちばん減っている段 | 考えられること | WEB側でできる一手の例 |
|---|---|---|
| 問い合わせ → 有効 | 営業・迷惑・対象外の相談が多い | フォームの迷惑対策を見直す/対象外のサービスや地域をページに明記する |
| 有効 → 商談 | 相談が漠然としている/返信まで時間が空く | フォームに「ご検討の時期」などの任意項目を足す/通知の届け先を見直し、返信を早める |
| 商談 → 受注 | 価格や条件が合わない相談が多い | 料金の目安や「費用が変わる条件」を載せる/導入事例で向いているお客さまを伝える |
ここでも、一度に全部はやりません。いちばん減っている段について、1つだけ試します。直した日をメモしておけば、次の3か月で変化を確かめられます。
具体例:60件の問い合わせを4段で数えてみたら
ある会社で、7〜9月の3か月に届いた問い合わせ60件を、営業と一緒に4段で数えてみました。
| 段 | 件数 | 前の段から進んだ割合 |
|---|---|---|
| 問い合わせ | 60件 | — |
| 有効な問い合わせ | 45件 | 75%(45÷60) |
| 商談 | 18件 | 40%(18÷45) |
| 受注 | 6件 | 約33%(6÷18) |
問い合わせ全体から見た受注は、60件中6件で10%でした。
いちばん低かったのは、有効な問い合わせから商談への40%。営業担当と一覧を見返すと、「返信したけれど、そのまま返事が来なかった」ものが多く、その多くは問い合わせから返信まで2〜3日空いていたことがわかりました。フォームの通知が営業の共有アドレスに届くだけで、誰が返すか決まっていなかったのです。
そこでWEB担当は、2つのことをしました。
- フォームの通知を、営業の当番の人にも直接届くように設定を変えた
- フォームに「ご検討の時期(任意)」の選択項目を足し、急ぎの相談がひと目でわかるようにした
次の3か月(10〜12月)では、有効な問い合わせ44件のうち22件が商談に進み、商談化率は50%(22÷44)になりました。問い合わせの件数はほとんど変わらないのに、仕事につながる相談が増えた、という変わり方です。
もちろん、結果は業種や時期によって変わります。でも、「問い合わせをもっと増やさなきゃ」と広告やSEOに手を広げる前に、届いている相談を取りこぼさない一手が見つかったこと自体が、大きな前進です。
歩留まりを見ることで、何が変わるか
- 直す場所に、根拠ができる:「なんとなくフォームを直す」ではなく、「商談化率が低いから、ここを直す」と言えるようになります。
- 営業との会話が変わる:同じ表を見ながら話すことで、「WEBは件数、営業は受注」と分かれていた目標が、ひとつの流れとしてつながります。
- 上司への報告が一段深くなる:「問い合わせ12件」に加えて、「そのうち商談4件、受注1件」と言えると、サイトが仕事にどうつながっているかが伝わりやすくなります。
- 問い合わせ数の増減に振り回されにくくなる:件数が減った月でも、商談や受注が保てていれば落ち着いて受け止められます。
問い合わせの件数を毎月きちんと数えてきたあなたの仕事は、それだけで立派な土台です。その先を営業と一緒に少しのぞいてみるだけで、その数字は「サイトがどれだけ仕事を運んでいるか」を語る数字に変わります。
明日やること
- 営業担当に「問い合わせのその後を、一緒に一度見せてほしい」と30分の時間をお願いする
- スプレッドシートに「受付番号」「入口」「有効か」「商談か」「受注か」の5列を作る
- 4段の定義(とくに「商談」の区切り)を、営業がふだん使っている言葉に合わせて書いておく
- 直近3か月分の問い合わせを、受付番号つきで一覧にしておく
チェックリスト
段を決める
- 「問い合わせ/有効/商談/受注」の4段を、自社の言葉で定義した
- 「商談」の区切りを営業とそろえた
数える
- 直近3〜6か月の問い合わせを一覧にした(電話・メールの分も含めた)
- 営業と一緒に、商談・受注の欄を埋めた
- 問い合わせが届いた月を基準に数えた
- 「検討中」を別に数えた
- 会社名・担当者名などの個人情報を表に写していない
割合を出す
- 有効率・商談化率・受注率を計算した
- いちばん低い段に印をつけた
一手を決める
- いちばん減っている段について、WEB側でできることを1つ決めた
- 直した日をメモし、次の3か月で同じ表を作ることにした
全部を一度に埋めなくて大丈夫です。今日は「営業に30分もらう」約束ができただけでも、十分に前へ進んでいます。
問い合わせの「その先」は、WEB担当からは見えにくい場所です。でも、見えにくいだけで、あなたが整えてきたサイトは、ちゃんとその先の仕事にもつながっています。まずは明日、営業担当に一声かけて、一枚の表を一緒にのぞいてみましょう。

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本記事は一般的な実務情報です。具体例の数字は説明のための一例で、結果は業種・時期・営業体制によって異なります。GA4やフォームツールの画面・機能は更新されることがあります。最終的な設定や判断は、各サービスの最新の公式情報でご確認ください。