
チャットボットをサイトに置くか|導入前に確かめる3つの判断
「最近よく見るけど、うちもチャットボット置いたほうがいいんじゃない?」 社内でそう聞かれて、「……どうなんでしょう」としか返せなかった。そんなことはありませんか。
営業メールでも「問い合わせ対応を自動化」「24時間すぐに回答」と案内が届きますし、生成AIを使ったチャットボットも身近になりました。気になるのは当然です。でも、置いたあとに誰が中身を直すのか、間違った答えを返したらどうするのか——そこまで考えると、手が止まってしまいますよね。
迷うのは、ちゃんと運用のことまで考えているからです。今日は、チャットボットを置くかどうかを、自社の問い合わせを材料にして落ち着いて判断する手順を、一緒に整理していきましょう。
結論:チャットボットを置くかどうかは、次の3つで判断できます。
① 数える:直近3か月の問い合わせを分けて、「ページを見れば答えがわかる質問」がどれくらいあるかを見る。
② 先にFAQで答えてみる:多い質問を、まずFAQページや該当ページの文章で解決できないか試す。
③ 置くなら、担当を決めて小さく試す:答えの中身を見直す人と、人につなぐ先を決めてから、期間とページを絞って試す。
「置かない」と決めるのも、立派な判断です。
チャットボットで、何が起きているのか
ひとくちにチャットボットといっても、いまサイトに置かれているものは大きく3つに分かれます。
| 種類 | どう答えるか | 向いていること | 気をつけたいこと |
|---|---|---|---|
| シナリオ型 | あらかじめ用意した選択肢をたどって案内する | 営業時間・料金の目安・資料の場所など、答えが決まっている質問 | 想定外の質問には答えられない。選択肢の見直しが必要 |
| AI型(生成AI) | 登録した資料やページの内容をもとに、文章で答える | 質問の言い回しがばらばらな場合 | 事実と違う答えを返すことがある。答えの元になる資料の更新が必要 |
| 有人チャット | 担当者がその場で返信する | 相談の中身が個別で、すぐ話したい人が多い場合 | 対応する時間と人が必要。不在時の案内を決めておく |
どれも「置けば問い合わせ対応が楽になる」とは限りません。シナリオ型もAI型も、答えの中身は自社で用意して、見直し続ける必要があります。有人チャットなら、返す人の時間がかかります。
つまり、チャットボットは「仕事を減らす道具」というより、「よくある質問への答え方を、別の形で用意する道具」です。だからこそ、まず「よくある質問が本当に多いのか」を確かめるところから始めると、判断がぶれにくくなります。
チャットボット導入を判断する3ステップ

① 数える:問い合わせを3つに分けてみる
まずは、直近3か月の問い合わせ(フォーム・メール・電話のメモ)を一覧にして、次の3つに分けます。
- ページに答えがある質問:営業時間、対応地域、料金の目安、資料のダウンロード場所、アクセス方法など。サイトのどこかに書いてあるのに、見つけてもらえなかったもの
- 個別の相談:見積もりの依頼、自社の状況に合わせた相談など。人が答える必要があるもの
- その他:営業の売り込み、採用への応募、既存のお客さまの事務連絡など
ここで見たいのは、「ページに答えがある質問」が全体のどれくらいかです。チャットボットが得意なのは、この種類の質問だからです。逆に、個別の相談がほとんどなら、チャットボットを置いても結局は人が答えることになります。
分類のやり方は、問い合わせ内容を分類して分析するの手順がそのまま使えます。会社名や担当者名は写さず、受付日と質問の中身だけで十分です。
② 先にFAQで答えてみる:いちばん軽い方法から
「ページに答えがある質問」が多いとわかったら、すぐにチャットボットを探す前に、ひとつ試してほしいことがあります。多い質問の答えを、FAQページや、その質問が出やすいページの近くに書いておくことです。
- 多い質問の上位5つを、FAQページに「質問と答え」の形でまとめる
- 料金や対応地域の質問が多いなら、サービスページの目立つ場所に一文足す
- 問い合わせフォームのすぐ上に、「よくある質問はこちら」のリンクを置く
これはチャットボットと同じ「よくある質問に先回りして答える」仕組みを、いちばん手間とお金をかけずに試す方法です。FAQの作り方はFAQページの作り方で詳しく整理しています。
1〜3か月たったら、もう一度①と同じように数えてみます。ページに答えがある質問が減っていれば、それで十分かもしれません。減らなければ、「書いてあっても見つけてもらえない」状態なので、そこで初めて、チャットボットという別の入口を検討する意味が出てきます。
③ 置くなら、担当を決めて小さく試す
それでもチャットボットを試すと決めたら、置く前に次のことを決めておきます。ここは現場でも抜けやすいところです。
決めておくこと
- 答えの中身を見直す人:料金や営業時間が変わったとき、チャットボットの答えも直す人を一人決める。サイトの更新手順に「チャットボットの答えも確認」を一行足しておく
- 人につなぐ先:答えられない質問のときに、問い合わせフォームや電話番号へ案内できるようにしておく
- 不在時の案内(有人チャットの場合):夜間・休日は「翌営業日にご返信します」などと表示する
確かめておくこと
- 入力された内容の扱い:利用者がチャットに書いた内容が、サービス側でどう保存・利用されるか(AI型なら、学習に使われる設定かどうかも)を、利用規約や設定画面で確認する。個人情報を書かれる可能性があるなら、プライバシーポリシーの記載とも合っているかを見ておく
- ページの重さ:チャットの部品を入れるとページの読み込みが重くなることがあります。置く前と後にPageSpeed Insightsで測っておくと安心です
- スマホでの見え方:チャットのアイコンが、スマホでボタンや本文に重なっていないかを実機で見る
そして、最初は期間とページを絞ります。たとえば「料金ページとFAQページだけに、3か月だけ置く」。全ページに一気に置くより、効果も問題点も見えやすくなります。AI型を試すなら、答えの元にする資料を自社サイトの内容などに絞り、管理画面の会話履歴を週に一度読んで、事実と違う答えがないかを確かめましょう。
具体例:90件の問い合わせを分けてみたら
ある会社で、7〜9月の3か月に届いた問い合わせ90件を分けてみました。
| 分類 | 件数 | 全体に占める割合 |
|---|---|---|
| ページに答えがある質問 | 27件 | 30%(27÷90) |
| 個別の相談 | 48件 | 約53%(48÷90) |
| その他(営業・採用など) | 15件 | 約17%(15÷90) |
「ページに答えがある質問」27件の中身を見ると、多かったのは「対応している地域」「土日の対応」「見積もりは無料か」の3つ。どれもサイトに書いてはあったものの、会社概要ページの下のほうにあって、見つけにくい場所でした。
そこでWEB担当は、チャットボットを置く前に、次の2つだけをしました。
- この3つの質問と答えを、FAQページの先頭とサービスページの見出しのすぐ下に書いた
- 問い合わせフォームの上に「よくある質問」へのリンクを置いた
次の3か月(10〜12月)では、ページに答えがある質問は12件に減りました。個別の相談の件数はほぼ変わらず、人が答えるべき相談に、時間を使えるようになったという変わり方です。
この会社では、「いまはチャットボットは置かない。半年後にもう一度数えて考える」と決めました。社内には、数えた表を見せて説明したので、「なんで置かないの?」とはなりませんでした。
もちろん、ページに答えがある質問がもっと多い会社や、営業時間外の問い合わせが多い会社なら、チャットボットを試す価値は十分にあります。大事なのは、置く・置かないを、自社の数字で決められたことです。
判断の手順を踏むことで、何が変わるか
- 社内に説明しやすくなる:「流行っているから」ではなく、「この種類の質問がこれだけあるから」と、根拠を持って話せます。
- 置いたあとに困りにくくなる:答えを見直す人と、人につなぐ先が決まっているので、古い情報や間違った答えが放置されにくくなります。
- お金と手間を、必要なところに使える:FAQで足りるなら、その分の時間を個別の相談への返信に回せます。
- 置かない判断にも自信が持てる:数えた表があれば、半年後にもう一度同じ方法で見直せます。
「新しい仕組みを入れない」と決めるのは、案外勇気がいるものです。でも、自社の問い合わせを一件ずつ見たうえでの判断なら、それは立派な運用の判断です。
明日やること
- 直近3か月の問い合わせを、受付日と質問の中身だけで一覧にする
- 「ページに答えがある質問/個別の相談/その他」の3つに分けてみる
- ページに答えがある質問のうち、多いものを上位3つ書き出す
- その3つの答えが、サイトのどこに書いてあるかを確かめる
チェックリスト
数える
- 直近3か月の問い合わせを一覧にした(電話・メールの分も含めた)
- 「ページに答えがある質問/個別の相談/その他」に分けた
- ページに答えがある質問の割合を計算した
- 会社名・担当者名などの個人情報を表に写していない
先にFAQで答える
- 多い質問の上位をFAQページにまとめた
- 質問が出やすいページの近くにも、答えを一文足した
- 問い合わせフォームの近くに「よくある質問」へのリンクを置いた
- 1〜3か月後にもう一度数える日を決めた
置くなら、担当を決めて小さく試す
- チャットボットの答えを見直す人を決めた
- 答えられないときに、フォームや電話へ案内できるようにした
- 入力された内容の保存・利用のされ方を、利用規約や設定で確認した
- 置く前と後で、ページの表示速度を測った
- スマホで、アイコンがボタンや本文に重なっていないか見た
- 置くページと期間を絞って試すことにした
全部を一度に進めなくて大丈夫です。今日は「問い合わせを3つに分けてみる」だけできれば、判断の材料はもう手元にそろい始めています。
チャットボットを置くかどうかに、どこの会社にも当てはまる正解はありません。でも、届いている問い合わせを一件ずつ見てきたあなたなら、自社に合う答えをちゃんと出せます。まずは明日、問い合わせの一覧を開いて、3つの山に分けるところから始めてみましょう。

よければ、こちらも
- 問い合わせ内容を分類して分析する|多い相談からサイト改善のヒントを見つける
- FAQページの作り方|「よくある質問」で問い合わせと検索に応える
- 問い合わせ導線の整理|電話・メール・フォームの入口をわかりやすくする
- 問い合わせ返信テンプレと社内フローの整え方|一人でも迷わない
- 問い合わせフォームの個人情報|扱い方とプライバシーポリシーの基本
- サイトの表示が遅いかも|PageSpeed Insightsで測って直す基本
受注から逆算して、必要な問い合わせ数の目安を出したいときは問い合わせ数 試算・逆算 計算機もどうぞ。「うちの場合はどう考えたらいい?」と迷ったら、お問い合わせから気軽に声をかけてくださいね。
本記事は一般的な実務情報です。具体例の数字は説明のための一例で、結果は業種・時期・問い合わせの傾向によって異なります。チャットボットの機能・料金・データの扱いはサービスごとに異なり、更新されることがあります。導入の判断や設定は、各サービスの最新の公式情報・利用規約でご確認ください。