自社サイトの画面を開き、文字の見え方や色の濃さを確かめている企業のWEB担当者。机には気づいた点を書き留めるノートとペンが置かれている

ウェブアクセシビリティの最低限|企業サイトで今日見直せる5点

「ウェブアクセシビリティ、うちも対応しないとまずいんじゃないか」——上司や役員から急にそう言われて、少し身構えてしまったことはありませんか。

調べてみると「義務化」という言葉が並んでいて、専門用語も多くて、何から手をつければいいのか分からない。予算もない、時間もない、相談できる人もいない。そんな状態で「対応してください」とだけ言われると、正直しんどいですよね。

先に、少しだけ肩の力が抜ける話をします。ウェブサイトを規格どおりに作り替えることが、そのまま法律で義務づけられているわけではありません。ここは誤解が広まりやすいところなので、まず前提を整理します。そのうえで、今日あなたの手元で確認できる5つのポイントを一緒に見ていきましょう。

結論:まずやることは、①「サイトの規格準拠=義務」ではないと前提を正しく押さえる → ②文字・色・リンク文言・代替テキスト・キーボード操作の5点を自分のサイトで見てみる → ③直せるところから1つ直す、の3つです。
全ページを完璧にする必要はありません。まずはトップページと問い合わせページの2枚だけ見てみる。それで今日は十分です。

何が起きているのか:「義務化」の中身を整理する

まず、よく混ざってしまう2つの話を分けます。

1つ目は、法律の話です。 障害者差別解消法の改正により、2024年4月1日から、民間の事業者にも「合理的配慮の提供」が義務づけられました。これは「障害のある方から、社会的な障壁を取り除いてほしいという意思表示があったときに、負担が重すぎない範囲で対応する」という考え方です。

2つ目は、規格の話です。 日本には「JIS X 8341-3」というウェブアクセシビリティの規格があり、達成度合いを表すレベル(A/AA/AAA)が定められています。国や自治体などの公的機関には、この規格に沿った対応が求められてきました。

ここで大事なのは、この2つはイコールではないということです。1つ目の法律が義務づけているのは「求められたときに、できる範囲で対応すること」であって、「すべての民間企業のサイトが、いますぐ規格に準拠していなければ違法になる」という意味ではありません。この点は、デジタル庁が公開している「ウェブアクセシビリティ導入ガイドブック」でも、誤解されやすい点として説明されています。

補足:合理的配慮とは、たとえば「サイトの情報が読み取りづらい」と連絡をもらったときに、電話やメールで内容をお伝えする、資料を別の形式でお送りする、といった対応も含む考え方です。サイトの改修だけが答えではありません。

では、規格の話は関係ないのかというと、そうでもありません。サイト側をあらかじめ整えておくほど、個別の対応で慌てる場面が減ります。そして、ここが実務的にありがたいところなのですが、アクセシビリティの基本は、そのまま「読みやすいサイト」の基本と重なります。文字が読みやすい、リンク先が分かる、画像に説明がある——どれも、目の見えにくい方だけでなく、スマホの画面を屋外で見ている人にも、急いでいる人にも効いてきます。

だから、身構えなくて大丈夫です。特別な対応を追加するというより、いま持っているサイトを少し整える。その延長線上にあります。

今日見直せる5点

今日見直せる5つの観点「文字」「色」「リンク」「画像」「キーボード」を並べた図
特別なツールがなくても、この5つは自分の目と手で確認できる

自社サイトをブラウザで開いて、上から順に見ていきます。専用ツールがなくても、ここまでは目と手で確認できます。

1. 文字:小さすぎないか、拡大できるか

本文の文字が小さいと、それだけで読むのをやめられてしまいます。目安として、本文は16px前後を下回っていないかを確認します。数値が分からなくても、スマホを持って腕を伸ばした距離で読めるかを試せば、体感でだいたい分かります。

あわせて、ブラウザの拡大(PCなら Ctrl と「+」、Macなら command と「+」)で200%くらいまで広げてみてください。文字が重なる、はみ出す、ボタンが押せなくなる——そういう崩れがないかを見ます。

2. 色:文字と背景の濃さの差が足りているか

薄いグレーの文字や、写真の上に白い文字を重ねたデザインは、見た目がきれいな一方で、明るい場所や見え方によっては読み取りづらくなることがあります。

厳密には「コントラスト比」という数値で測りますが、まずは簡単な方法で十分です。スマホを持って、屋外や窓際の明るい場所で自社サイトを開いてみる。それだけで、読みにくい箇所はかなりはっきりします。

もうひとつ。色だけで意味を伝えていないかも見ておきたいところです。たとえばフォームで、必須項目を赤い文字だけで示していると、色の見え方によっては伝わらないことがあります。「必須」の文字や記号を添えておくと確実です。

3. リンク文言:「こちら」だけになっていないか

これは今日すぐ直せて、しかも効果が分かりやすいポイントです。

「詳しくは<u>こちら</u>」「<u>こちら</u>からお問い合わせください」——つい書いてしまう表現ですが、リンクの文字だけを拾って読む使い方をしたときに、行き先が分からなくなります

リンクの文字を見ただけで、どこへ行くか分かる。この一点だけです。ちなみにこれは、検索エンジンに対しても「そのリンク先が何のページか」を伝える手がかりになります。

4. 画像:伝えたい情報が画像だけになっていないか

画像にはalt属性(代替テキスト)という、画像の内容を文字で説明する項目があります。多くのCMSでは、画像を入れるときに「代替テキスト」「alt」といった入力欄が用意されています。

ここで一番気をつけたいのは、文字だけの画像です。営業時間のお知らせ、キャンペーンの条件、料金表——これらを画像1枚で作ってしまうと、その中の文字は読み取れる形で届きません。画像の下に同じ内容をテキストでも書いておく、それだけで解決します。

なお、装飾目的の画像にまで無理に説明を付ける必要はありません。意味を持たない飾りは、altを空にしておくのが基本です。

5. キーボード:マウスを使わずに操作できるか

最後にひとつ、少し変わった確認です。マウスから手を離して、Tabキーだけを押していってみてください

いま選ばれている場所が、リンクやボタンを順番に移動していきます。このとき見たいのは2つです。①いまどこが選ばれているか、見て分かるか(枠や色の変化が出るか)。②問い合わせフォームの最後まで、キーだけでたどり着いて送信できるか

途中で選択位置が見えなくなったり、押せない箇所があったりしたら、それはメモしておく価値があります。すぐ直せないことも多いので、制作会社に相談するときの材料として持っておけば十分です。

見つけたあと、どうするか

確認して問題が見つかると、「全部直さないといけないのか」と気が重くなるかもしれません。そこは落ち着いて分けましょう。

自分で直せるもの:リンク文言、画像のalt、文字だけの画像のテキスト補足、フォームの「必須」表示。これらは記事や固定ページを編集するだけで直せることが多いです。

制作会社に相談するもの:文字サイズや色の設計、キーボード操作の挙動。サイト全体のデザインやテンプレートに関わる部分なので、自分で触ると別の場所が崩れることがあります。次の改修や保守のタイミングで、まとめて相談するのが現実的です。

そして、社内向けに一言添えるなら、こう伝えられます。「規格への完全準拠がすぐ義務になるわけではありませんが、読みやすさの改善として、直せるところから進めています」。誇張も過小評価もない、正確で落ち着いた説明です。

明日やること

  1. 自社サイトのトップページと問い合わせページを、スマホで屋外か窓際で開いてみる。読みにくい箇所があれば、それだけメモする。
  2. 「こちら」というリンク文言を検索して、行き先の分かる言葉に書き換える。1ページ分でも構いません。今日いちばん手が動きやすい一手です。
  3. 文字だけの画像がないか探し、あれば同じ内容をテンプレートの本文にも書き足す。営業時間やキャンペーン条件など、伝わらないと困る情報から。

全部やらなくて大丈夫です。3のうち1つでも動けば、サイトは今日より読みやすくなっています。

チェックリスト

一度に埋める必要はありません。まずは最低ラインの3つから。

最低ライン(これだけは)

余裕があれば(推奨)

見直しを終えて読みやすくなったサイトを眺め、穏やかな表情で前を向いている企業のWEB担当者

アクセシビリティという言葉は、どうしても大がかりに聞こえます。専門の会社に頼んで、監査を受けて、大改修して——そんなイメージが先に立って、「うちには無理だ」と思ってしまいがちです。

でも実際にやっていることは、「こちら」を分かる言葉に書き換える画像の中の文字を本文にも書く明るい場所でスマホを見てみる。そういう、ひとつずつの小さな整えです。そしてそれは、あなたが普段からやっている「読みやすくする」仕事と、地続きです。

誰かが自社サイトを訪れて、迷わず必要な情報にたどり着けること。その積み重ねを支えているのが、この地味な確認作業です。

今日、リンク文言をひとつ書き換えられたなら、それはもうサイトが少し開かれたということ。焦らず、次に触るページでもうひとつ。それで十分です。

※本記事は2026年8月時点の一般的な実務情報です。法令・ガイドライン・規格の内容や名称は改正されることがあり、自社の状況によって求められる対応も異なります。最終的な判断は、デジタル庁「ウェブアクセシビリティ導入ガイドブック」や内閣府の障害者差別解消法に関する案内など、最新の公式情報をご確認のうえ、必要に応じて専門家・制作会社にご相談ください。

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